火災保険・地震保険の査定は保険会社によって差があるの?

はじめに
地震保険・火災保険ブログ

地震保険・火災保険申請サポートの業務を行っている【東北ホームリサーチ】と申します。
当ブログでは、地震保険と火災保険について一般の方にはあまり知られていない情報等を発信しております。

著者情報

東北ホームリサーチの調査員

保有資格:損害保険登録鑑定人
    :一級建築板金技能士

よく自動車保険の場合は保険会社によって出し渋りがあると聞きます。では火災保険、地震保険の査定は保険会社によって下りやすい下りづらいの差があるのでしょうか?本記事では火災保険、地震保険の査定について経験則に基づいて述べていきます。

保険会社によって支払額の差

先に結論を言いますと火災保険の場合は保険会社によってかなり差があります。また地震保険は他の保険と違って国がサポートしているので地震保険損害認定基準というものが有り、どこの保険会社も同じとされていますが実際のところは差があると言えます。

これからのその理由を説明してきます。

火災保険の支払い格差

火災保険を申請する場合は修理業者の見積書を提出しますが、そこから保険会社が調整を行って最終的に支払われる金額が決まります。例えば見積金額を120万円とした場合に、実際に下りる金額が100万円位になる場合もありますし60万円位になる場合もあります。

この差は何かと言うと申請した箇所に対して損害が認定されなかった所があったりするからです。また見積金額が高いとそこでも調整を行います。火災保険の場合は、どこの保険会社が支払いが良いとか悪いかとか本記事では言えませんが、保険会社によってかなり差がある事は事実です。

特に差が出るのどんな時かと言うとよくある事例として損傷の度合いが小さい場合です。例えば雨樋が雪の重みで壊れた場合、雨樋が割れて落ちてしまったケースと、ただ単にたるんでるケースがあるとします。前者の場合は誰もが損傷として認めますが、後者の場合は損傷として認める人と認めない人がいます。

この様に損傷が小さい場合だと、ほぼ担当者あるいは鑑定人の裁量となりますので極端な話をすると、同じ損傷でも担当する人によって無責(0円)となる場合もありますし、数十万円下りる場合もあります。実際に過去の事例を振り返っても小さめの損傷で下りた例もあれば、それよりも損傷が大きかったにも関わらず下りなかった例もあります。

また火災保険の申請は保険会社によって書類だけで済ませ様とする所と鑑定(実際に建物を見に来る)をなるべく行う所があります。それぞれの特徴を挙げていきます。

書類のみで済ませようとする保険会社

書類のみの場合は、メリットとして保険金が下りるまで早いのと、損傷が分かりやすくて明らかな場合はそれ程減額されずに下りる傾向があります。

ただし損傷が弱い場合、あるいは写真では損傷状況が分かりづらい場合はかなり厳しくなります。下りない場合は、電話で事務的に下りませんと言ってきます。ここで応じてしまうとそのまま無責(受取額0円)となりますが、どうしても納得が出来ないと思う場合は「現場を見てもいないのに下りないのは納得がいかないから見に来て欲しい」等と言うべきです。

こうする事によって鑑定人が損傷状況を目視する事によって下りる場合があります。

実際に現物は明らかに壊れているのに、写真の場合だとあまり壊れている様には見えないという事はよくあります。

鑑定をなるべく行う保険会社

鑑定の場合は、保険金が下りるまで少し時間がかかる傾向がありますが、総合的には鑑定に来てもらった方がメリットが多いと言えます。その理由として鑑定を行っている時に、損傷として認めている部分と認めていない部分がある程度分かるからです。(大抵の鑑定人は聞けば答えてくれます。)

そこで鑑定人が認めていない損傷に対しても、「よく見て、ここがこうなっている」等と言えばそこでも認めてくれる場合もあります。とにかくリアルタイムで状況を確認出来る事、伝えられる事がメリットだと言えます。

また、実際に顔を合わせているので情に訴えやすいというメリットもあります。やはり鑑定人も人間なので情に訴える事によって支払額が上がる可能性も無きにしも非ずです。

下ろさないつもりで専門業者を連れてくる場合もある

ただし、鑑定の場合も良い事ばかりではなく、この案件は絶対に下ろす気がないという感じで来る場合もあります。それはどんな時かと言うと複数人で来る場合です。実際に過去にあった例ですが、専門業者をわざわざ連れて来て「これは〇〇の原因でこうなる場合があるけど機能的には問題無し」みたい事を言ってきます。鑑定人の口から言わずに専門業者に言わせてきます。

ただ複数人で来てるからと言ってもたまに保険会社の社員が同行してる場合もあります。この時は下ろす気が無い訳ではないので、鑑定人の後ろに誰かいたら名刺をもらってどういう理由で来ているのか聞いておいた方が無難です。

地震保険の査定について

引用元:地震保険 – 損保ジャパン

地震保険から支払われる保険金を知る為には、まず「保険金額」というのが重要になります。証券に記載されているのでご確認下さい。この保険金額に対して損害の程度によって4段階に分けて支払われます。

例 建物の保険金額1,000円の場合
一部損    50万円
小半損  300万円
大半損  600万円
全損  1,000万円
火災保険の場合は見積金額から調整が行われるので保険会社によって同じ見積金額に対しても減額される金額に差が出る事はありますが、地震保険の場合は支払われる基準が決まっているので判定がどこの保険会社でも一緒なら支払われる金額は同じです。
 
上の例の様に建物の保険金額が1,000万円の場合、仮に一部損と認定されたらどこの保険会社でも差が無く50万円が支払われます。

地震保険は鑑定人によって査定基準がバラバラ

地震保険の場合は申請を行うと基本的には鑑定に来ますが、2021年2月13日の福島県沖地震から書類申請(自己申告制)も行う様になりました。まずは鑑定から説明します

地震保険は保険金額によって支払われる金額は4パターンのみですが認定基準に対しては鑑定人によってかなり差が出ます。例えば同じ損傷でも、小さめの損傷の場合は無責(受取額0円)と判定する人もいれば、一部損と判定する人もいます。あるいは、それなりの損傷の場合でも、一部損と判定する人もいれば、小半損と判定する人もいます。

損害認定基準があるのになぜ鑑定人によって差が出るのか説明します。例として木造住宅の損害認定基準を見てみましょう。

木造枠組壁工法損害認定基準

引用元:地震保険 – 損保ジャパン

この損害認定基準(地震保険契約のしおりに載っています)はどの保険会社でも一緒です。木造住宅には在来軸組工法(在来工法)と木造枠組壁工法があるのですが、共通部分として基礎と屋根と外壁について説明します。

木造枠組壁工法:2×4(ツーバイフォー)工法、2×6(ツーバイシックス)工法、木質パネル工法、木造プレハブ工法等

まず基礎はヘアークラック(幅0.2~0.3mm程度のひび)を損傷として拾う人と拾わない人がいます。基礎の場合は数本で一部損と認定される事が多いので、もし基礎以外の損傷が全く無い場合で、基礎にあるクラックが全部ヘアークラックであれば、損傷として拾う人の場合は一部損となりますが、拾わない人の場合は無責(受取額0円)となります。

屋根の損害認定基準を見てみると(屋根の葺き替え面積/全屋根面積)となっていますがこの葺き替え面積というのは正確に測るのでは無く、ほぼ鑑定人の裁量となっています。

外壁を見てみると在来工法は(損傷外壁面積/全壁面積)、木造枠組壁工法は(1階の損傷壁水平長さ/1階の外周述べ長さ)となっています。外壁も分子の部分(損傷外壁面積、1階の損傷壁水平長さ)も、ほぼ鑑定人の裁量となっています。

実を言うと在来工法と木造枠組壁工法(ツーバイ工法)は損害認定基準に格差があります。結論を先に言いますと木造枠組壁工法は他の構造よりも認定基準が甘く小半損以上の判定が出やすくなっています。
詳しくはこちらの記事「宮城・福島等の地震多発エリアの方へ、地震保険を多くもらう為には?」を参照して下さい。
基礎、屋根、外壁の分母の部分は誰が行っても同じでですが、分子の部分は鑑定人によってかなり差が出ます。損害の程度「一部損、小半損、大半損、全損」は各主要構造部の損害割合を全て足した数字で決まりますので、同じ損傷でも鑑定人によって、例として一部損と判定する人もいれば小半損と判定する人がいる訳です。

木造枠組壁工法(ツーバイ工法)の内壁について

木造枠組壁工法の内壁は(1階の入隅損傷箇所合計×0.5/1階の入隅全箇所数)となっています。

入隅とは下画像の部分です。内壁と内壁が90度にぶつかり合っている部分と思って下さい。
ツーバイ工法の入隅の損傷

木造枠組壁工法の入隅の査定は特に鑑定人によって差が出ます。と言うのも木造枠組壁工法は内壁のポイントが高いのである程度損傷があると小半損以上の判定が出やすく、それが問題になっている(他の構造よりも査定基準が甘い)として査定を厳しくする人が結構います。まず分母の部分は「1階の入隅全箇所数」ですが、人によって数え方がバラバラです。分母は小さい程損害割合が上がってしまうので入隅の数をわざと多く数える人もいます。

入隅は上の画像の様に分かりやすい部分だけではありません。実際の家には上部しか交わっていない部分等が有り、入隅として数えるべきか迷う箇所がかなりあります。厳しく査定する人は少しでも直角に交わっていれば何でも数える人もいます。こうする事によって分母が大きくなり損害割合を抑える事が出来ます

また分子の部分の「1階部分の損傷個所合計×0.5」とありますが、屋根の様に面積ではなく、損傷が有るか無いかでカウントする為、カウントする事によってすぐに損害割合が上がるので厳しく査定をする人がいます。ちなみに上の画像の場合は損傷しています。

損傷した入隅の拡大図
ツーバイ工法の入隅の損傷の拡大

この位損傷していても人によっては数えない(あるいは気付かない)人もいます。木造枠組壁工法の場合1本1本を損傷とし拾うか拾わないかで判定が一段階変わる事が結構あります。

在来工法の柱について

木造枠組壁工法の内壁程ではありませんが、在来工法の柱(軸組)も結構ポイントが高いので柱にある程度損傷があれば小半損以上になる事があります。しかしながら今の家は柱を隠す大壁が主流となっているので在来工法の場合は実質的に基礎、外壁、屋根のみで査定している様な感じです。
※ただ鑑定人によっては内壁の損傷状況から柱が損傷していると推定してカウントしてくれる人もごく稀にいます。

この様な理由から柱が見えてる真壁の家の方が小半損以上の判定が出やすくなっています。ただし、柱の損傷も厳しく判定する人もいます。柱は地震だけでなく自然にひびが入る事もあるのでそういった理由でなかなか地震の損傷としてカウントしてくれない傾向があります。

地震保険の査定は鑑定人によってかなり差がでます。詳しくはこちらの記事「地震保険請求のコツと良い鑑定人、悪い鑑定人の見分け方」を参照して下さい。

書類申請の場合

2021年2月福島県沖地震から始まった書類申請は自分で損傷個所の写真を撮る形となり、下りなかった方が結構います。主な原因として、損害認定基準とならない部分の写真を撮って、結果的に間違った申請方法をしてしまったからです。(例:在来工法の家で内壁のひびだけを撮って申請等)やはりある程度知識が無いと難しいと思います。

書類申請の場合、申請方法さえ間違えなければ一部損にはなりますが、特に木造枠組壁工法(ツーバイ工法)の場合は一般の方では内壁の損傷を探すのが難しいので、本来なら小半損なのに一部損の判定になった方が結構います。

査定に納得してない場合は再申請で判定が変わる事がある

せっかく手間や時間をかけて申請をしても査定結果が納得いかない場合もあるかと思います。再申請を行う事によって査定結果が変わる場合もありますので、判定結果が変わりやすい例を紹介します。

火災保険
・書類申請のみを行って鑑定に来てない場合
地震保険の場合
・木造枠組壁工法(ツーバイ工法)で判定が無責(受取額0円)または一部損の場合
・在来工法で判定が無責の場合

これらの条件なら判定結果が変わる可能性があります。ただし、当然判定結果が妥当な場合もあります。再申請を行うにあったては、まずは判定結果が妥当であったか否かを見極める必要があります。弊社の「地震保険・火災保険申請サポート」では無料調査を行って判定結果が妥当であったか否かを見極め、小さく判定されていると判断した場合は再申請のサポートも行っております。

詳しくは↓
申請サポート詳細

保険会社によって査定の差が出る原因

保険会社の認定に関するランキング記事がありましたので紹介します。

【高額認定(50万以上)火災保険、地震保険会社ランキング】

1位:楽天損保
2位:日新火災
3位:セコム損保
4位:東京海上日動
5位:あいおいニッセイ同和損保
6位:三井住友海上

6位までが60%以上

7位:AIG損保
8位:損保ジャパン
9位:SBI損保
10位:共栄火災

【認定率が高い火災保険、地震保険会社ランキング】

1位:SBI損保
2位:東京海上日動
3位:日新火災
4位:セコム損保
5位:あいおいニッセイ同和損保
6位:三井住友海上
7位:楽天損保
8位:共栄火災

8位までが80%以上 

9位:損保ジャパン
10位:AIG損保

【認定が0円になる確率が高い火災保険、地震保険会社ランキング】

1位:AIG損保
2位:損保ジャパン

2位までが30%以上

3位:共栄火災
4位:楽天損保
5位:三井住友海上
6位:あいおいニッセイ同和損保
7位:セコム損保
8位:日新火災
9位:日新火災
10位:SBI損保

引用元:火災保険、地震保険会社ごとの認定率、認定額ランキングを公表。- PR TIMES

上の記事はあくまでも参考程度にして下さい。重要なのはここからです。

まとめると、査定結果に差が出るのは火災保険も地震保険も鑑定人によって査定の仕方がバラバラだからです。ただ冒頭では保険会社によって差があると述べましたが、その理由として保険会社が依頼する鑑定会社がある程度決まっているからです。どの保険会社も数ある鑑定会社に対して均等に仕事を振るという事はありません。

例えば〇〇保険会社は××鑑定会社をメインで依頼し、△△保険会社は□□鑑定会社をメインで依頼するという事です。

厳しい鑑定人のいる××鑑定会社は、先輩からその様に教えられたからそうなっている可能性があり、そこの鑑定会社には全体的に厳しい鑑定人が多くいるという事があり得ます。

つまり保険会社がメインで依頼する鑑定会社が厳しければその保険会社は支払いが悪くなる傾向があり、メインで依頼する鑑定会社が甘ければその保険会社は支払いが良くなる傾向があります。補足すると、鑑定人が行った鑑定結果に対して最終的に決めるのは保険会社ですが、よっぽどの事が無い限り保険会社は鑑定人の鑑定結果に従うそうです。

なので同じ保険会社でも地域ごとによってメインの鑑定会社が違ってくるので上のランキングはあくまでも参考程度に思って下さい。地域ごとに対して下ろしやすい保険会社は全然違ってくるのです。弊社は主に東北地方で業務を行っていて、特に宮城県内の保険会社はどこが支払いが良いのか熟知してますが、上のランキングとは随分違います。

地域ごとの保険会社の認定率を一番知っているのは、おそらく弊社が行っている様な「地震保険・火災保険申請サポート」業者でしょう。

お知らせ
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【東北ホームリサーチ】は主に東北地方で活動しております。
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