火災保険は加入率が高い割には意外と申請する方が少ないのが現状です。申請した事が無いからこそ使うとどうなるのかご存知無い方が多いので解説していきます。
申請した事が無い方が多い理由として、火災保険は火災の時にしか使えないと思っている方が多いという事と、火災保険を使うと目減りして肝心な時(家が全焼してしまった場合等)にもらえる額が減ると思っていて申請する事に対して躊躇する方もいるという点です。
結論を先に言いますとその様な事はありません。ただし火災保険も地震保険も多額の保険金を受け取る事によって解約になる場合があります。本記事では火災保険、地震保険を受け取った後どうなるかを説明していきます。
火災保険、地震保険は何度も請求出来る
火災保険は火災の時だけでなく自然災害等で建物等が損害を受けた時にも適用出来るので、数十年と家に住んでいれば割と申請機会があります。
また地震保険も震度4程度の地震から認定されやすくなるので割と申請機会があります。
火災保険も地震保険も基本的には解約にならない限り何度も請求する事が出来ます。解約になる条件は後述します。
ただし保険金を何度も受け取る為には条件があります。
⇒その箇所を直した場合、他の災害でまた同じ場所が壊れた場合は再請求可能。
⇒その箇所を直さなかった場合は、他の災害で同じ箇所が更に壊れても再請求不可。
⇒その箇所を直さなかった場合、他の災害で別の場所が壊れた場合は再請求可能。
火災保険、地震保険を受け取った後どうなるのか?
・個人の場合、受け取った保険金に対して税金はかかりません。(確定申告の必要もありません。)
・保険金を受け取っても個人単位での値上がりはありません。(例えば大災害が起きて全体の申請件数が増える事によって加入者全体で値上がりする事がありますが、請求した個人だけが値上がりするという事はありません。)
・事故日から3年以内に申請しなければ無効。(大災害等の場合は例外があります。例として、東日本大震災、2014年2月の大雪。)
火災保険、地震保険を受けとった時に解約になる場合
火災保険にも地震保険にも保険金額というものが設定されています。これは簡単に言うと「一度の事故で最大受け取れる金額」という事です。
火災保険も地震保険も一度の受取額によって解約になる場合があります。保険会社側から解約されるとなるとネガティブなイメージになりがちですが、その様な事ではありません。再契約する事も可能です。
火災保険と地震保険は少し異なりますので個々に説明します。
火災保険を受け取って解約になる場合
火災保険、地震保険を受け取って解約になる場合は下記を参照して下さい。
損害保険金が支払われた後、契約はどうなりますか?
契約始期によって下記のとおり異なります。
(2021年1月1日以降始期契約)
『THE すまいの保険』では、損害保険金のうち復旧に伴って発生した費用を除いた額が1回の事故につき、保険金額の80%に相当する額を超えた場合は、ご契約は損害が発生した時にさかのぼって終了します。なお、お支払額が保険金額の80%を超えないかぎり、ご契約の保険金額は減額されず満期日まで有効です。(2020年12月31日以前始期契約)
『THE すまいの保険』では、損害保険金のお支払額が1回の事故につき、保険金額の80%に相当する額を超えた場合は、ご契約は損害が発生した時にさかのぼって終了します。なお、損害保険金のお支払額が保険金額の80%を超えないかぎり、ご契約の保険金額は減額されず満期日まで有効です。地震保険では、「全損」と判定された場合は、地震保険のご契約は損害が発生した時にさかのぼって終了します。
なお、全損以外の認定による保険金のお支払いの場合には、地震保険の保険金額は減額されず満期日まで有効です。
保険は契約始期によって契約内容等がよく変わるので注意が必要です。
少しややこしいですが火災保険は保険金額に対して支払われるお金と別で、残存物取片づけ費用と臨時費用というお金も支払われます。2021年1月1日以降始期契約はこれらを除いた額が80%を超えた場合が解約、2020年12月31日以前始期契約はこれらを含んだ額が80%を超えた場合が解約となります。つまり2021年1月1日以降始期契約の方が解約になりにくくなったと言えます。
火災保険の場合は保険金額の80%程支払われる時に解約となりますが、実際にこの位支払われるという事は、火災でほぼ全焼、あるいは土石流(水災の補償がある場合に適用可)でほぼ全壊という事になります。なので火災保険が解約になる様な被害にあった家には住めない状態になっている筈です。火災保険を掛けている建物の契約が終了するだけで、建て直す事によって新たに火災保険に加入する事も可能です。
契約が終了するのはあくまでも被害にあった家なので契約者は別に悪い事をした訳では無いので同じ保険会社に加入する事も可能です。
地震保険を受け取って解約になる場合
地震保険は火災保険の様に再建出来る程もらえません。基本的には火災保険の最大で50%までとなります。例えば津波で家が流された、建物が崩壊した、噴火での火災で全焼した、これらの被害の様に住める状態ではなくなった(全損が認定された)としても、仮に火災保険金額が2,000万円だった場合は1,000万円までしか下りません。
※火災保険金額の最大100%まで設定出来る特約の例外もあります。
地震保険の場合は保険金が損害状況により4段階に分けられて支払われます。
【一部損(5%)、小半損(30%)、大半損(60%)、全損(100%)】
地震保険が解約となるのは一度の災害(地震、津波、噴火)で全損と認定された場合です。上に挙げた例の場合の様に住めなくなる程損害があれば当然全損となりますが、ここでの注意して頂きたいのは、地震保険の場合は必ずしも「全損=家が住めなくなる状態」とはならないケースも割とあります。
地震保険は、地震の揺れによる被害の査定は地震保険で言う主要構造部の損害状況で支払い額が決まります。細かい説明は本記事では省略させて頂きますが、地震保険は一見大した被害に見えなくても全損と認定される場合もあり得ます。
この場合は構造毎によって主要構造部は異なりますが、主要構造部とされている部分の修繕を行う事によって再契約が可能となります。もし同じ保険会社に再契約をするのならばビフォーアフターの写真を見せればよりスムーズにいくでしょう。
主要構造部:基礎、1階部分の外壁、1階部分の内壁、屋根
使っても保険金額は目減りはしない
もう一度言いますが保険金額は「一度の事故で最大受け取れる金額」となります。また先に引用した内容に「お支払額が保険金額の80%を超えないかぎり、ご契約の保険金額は減額されず満期日まで有効です」となっています。
また地震保険の場合「全損以外の認定による保険金のお支払いの場合には、地震保険の保険金額は減額されず満期日まで有効です。」となっています。
これらは何を意味するのかと言うと、解約にならない限りは保険金額はそのままなので、今後支払われる保険金額が目減りする訳では無いという事です。なので建物に損害があって保険金を受け取ったとしても、その後他の災害があっても、もらえる金額が減額される事は無いという事になります。
ただし、弊社が地震保険・火災保険申請サポートを行っている中で、鑑定人から聞いた話ですが「地震保険で1度小半損(旧契約では半損)以上の判定を認定された家は、直さなければ次はなかなか小半損以上の判定にはならない」との事でした。
これはどういった事かと言うと、地震保険で小半損(半損)の判定になるという事は主要構造部にはそれなりに損傷があるので、次査定するときに見れる範囲が狭くなるので当然と言えば当然です。弊社も調査する立場なのでこの言い分は分かります。
ただ、一部損の認定しかもらった事が無いような家だと見れる範囲はまだまだたくさんあるので必ずしも直す必要はありません。目安としては住んでいる方から見て外壁や基礎等にひびが多いと感じる位になれば直す、という認識で大丈夫でしょう。
結論:火災保険と地震保険は使わないともったいない
火災保険と地震保険は使ったとしても値上がりする訳でもありませんし、保険金額が目減りする訳でもありません。なので使える時には使いましょう。
くれぐれも建物が傷んだら全て自己負担で直すという考えはやめて、壊れた原因が自然災害の可能性があるのならば下りるかもしれない、修繕費をある程度抑えられるかもしれない、という事を頭に入れておきましょう。
建物を直したのであればビフォーアフターの写真や、修繕した証拠の書類(修理業者の見積書や請求書等)を残しておくと次に申請する時にスムーズになります。また経年劣化と言われづらくなります。